9月22日生まれのビルボとフロドへ2011/09/20 16:47

            HAPPY BIRTHDAY BILBO AND FRODO!

9月22日はビルボとフロドの誕生日です。

リチャード・アーミティッジが『ホビット』の映画でトーリン・オーケンシールド役を演じることになったという、長年のトールキン・ファンの私にとっては夢のような運命の巡り合わせを機に始めたこのブログですので、ここでもビルボとフロドの誕生日を祝って何かしたいと思いました。

と言ってもいいアイディアが思い浮かばないので、とりあえず『旅の仲間』の冒頭、「待ちに待った誕生祝い」の章で語られている、ビルボとフロドの誕生祝いの会の様子を見てみましょう。

ホビット紀元1401年9月22日、ビルボは111歳、フロドは33歳をむかえました。フロドは成人に達しました。二人あわせて144歳ということで、144人が誕生祝いの会に招待されました。ビルボがトーリン・オーケンシールド率いるドワーフたちと冒険 に旅立った1341年のあの日から、50年が経っていました。4月30日に出発した時50歳だったビルボが、9月22日51歳の誕生日をむかえたのは、樽に乗って到着した湖の町エスガロスでのことでした。

ふと思ったのですが、なぜトールキンは9月22日をビルボとフロドの誕生日に選んだのでしょうね?秋分だから?

こういう時には、トールキンの息子のクリストファーが編纂した、出版前の草稿を見てみるに限ります。今回はThe History of Middle-earthの第6巻、The Return of the Shadowです。ここには、'The Long Expected Party'の草稿4種類が収められています。

で、早速目を通してみると・・・おお、面白いですよお〜!

<初稿>:ビルボの誕生日は9月20日。この日、彼は70歳になっています。つまり冒険から戻って20周年です。
しかも、ビルボはスピーチの最後でこう言うのです:「さようなら!私は晩餐の後で出かけます。それから 結婚もする予定です。」
ビルボは結婚して沢山の子供を持ち、「あたらしい『ホビット』」はビルボの子供の一人についての物語となる、というわけです。
ビルボがまた旅に出たいと思ったのは、ドラゴンの黄金の魔力に駆り立てられたから、と説明されています。まだ「指輪」の恐るべき力というテーマは現れていません。ガンダルフもこのパーティには出てこないですし。

<第2稿>:ここで誕生日が9月22日に変更されています。でも残念ながら、クリストファーは変更理由について何も註をつけてくれていません。が〜ん、早くも行き詰まりましたが、気を取り直してつづけます。
ビルボは71歳の誕生日をむかえたとなっています。スピーチでは結婚に関するはアナウンスはなし。スピーチの最中もズボンのポケットの中の指輪をいじっていたのですが、段から降りると指輪をはめ、ホビット庄から姿を消します。ガンダルフや花火もこのヴァージョンで登場しています。

<第3稿>ビルボは、71歳で結婚し、111歳の誕生日の後間もなく、妻と一緒に姿を消しました。ビルボの妻、すなわちビンゴの母親は、ホビット庄の反対側、ブランディワイン川の向こうの古森の縁という怪しい地域であるバックランドの、ブランディバックス家のプリムラでした。
このヴァージョンで初めて息子ビンゴが登場します。彼の誕生日はビルボと同じ9月22日です。この第3稿での誕生祝いの会(72歳の誕生日)でのビンゴは、自分は72歳、(失踪している)父のビルボは144歳なので、ちょうど自分はその年の半分。父親の年齢を記念して招待客の数が決まったのだと言っています。

<第4稿>ビルボは未婚。99歳の時に甥のビンゴ・ボルジャー(当時27歳)を養子にしました。ビンゴの母親はプリムラ・ブランディバック、父親はロロ・ボルジャーです。母親はオールド・トゥークの有名三姉妹の一人で、このトゥーク家とブランディバック家の組み合わせというのは、不穏な要素、と指摘されています。ビンゴはビルボの養子となったので、名前をビンゴ・ボルジャー-バギンズに変えます。
ビルボは111歳の誕生日の直前、突然姿を消します。ビンゴは39歳でしたが、叔父の変人ぶりを受け継ぎ、自分とビルボの誕生日を祝い続けます。ビルボが父親ではなくて叔父になっていることを除き、ビンゴが72歳になった9月22日の誕生祝いのスピーチは、上に同じです。

<第5稿>:裂け谷の章まで書き進んだ後、また最初に戻って書き直されたヴァージョンです。ビルボが111歳の誕生日に指輪をはめて姿を消し旅立つ、という展開が確定されます。99歳の時にビンゴ・バギンズを養子にします。9月22日という同じ誕生日を持つことが、二人の絆として意識されていることが言及されているのが興味深いです。また、ビルボが指輪の影響力を感じ取っていることが初めて示唆されています。
スピーチでビルボは、自分(111歳)とビンゴの年を足すと160になると言っていて、そうするとビンゴはこの時49歳ということになります。ゲストの数も160人。
ただしここはまた書き直されて、144人のゲスト、ビンゴの年は33歳(成人に達する年)と変更されました。ビンゴが養子になったのは、21歳となっています。
ビルボが姿を消す時には、ガンダルフがピカッと閃光で皆の目を眩ませるところをはじめ、出版されたヴァージョンに近くなっています。

<第6稿>:ここで初めてビンゴがフロドに置き換えられます。
この段階では、ビルボの指輪がすべての指輪を統べるOne Ringだということになっていますが、パーティの場面などは第5稿と変わらないのでしょうか、クリストファーは言及してくれていません。

以上、1937年の12月半ばから書き始められた「あたらしい『ホビット』」の草稿の概要ですが、1954年に出版された『旅の仲間』の第一章までの間の変更を丁寧に辿ろうとしたら、それだけで一冊の本になってしまう、とクリストファーは書いています。

それで、ええと〜、長々と書きましたが、結局なぜ9月22日かという疑問は解消しませんでした。(^_^;)
秋分の日生まれの人に関するフォークロアでも調べた方がよかったのかな。勝手にでっち上げるなら・・・ちょうど昼と夜の時間が等しくなる日、昼/光の世界と夜/闇の世界という二つの世界を旅するキャラクターは、その中間のバランス地点に生まれる必要があったのか・・・な〜んて、説得力ないですかね。

あ、そうだ。占星術に答えがあるかしら?トールキンが占星術に凝っていたという話は聞いたことないけど、むむ、9月22日生まれって占星術 的ではどうなんだろうか。彼が専門としていた中世は、もちろん占星術が大きな位置を占めていたので、もしかするとその可能性も?

というわけで、謎はつづくよどこまでも。またご報告します。

コメント

_ dante ― 2011/09/21 17:51

原稿の変遷、興味深いですね。
9月22日の謎ですが、秋分の日だからというのは、かなりの確率で
あたっていそうな気がします。おっしゃるとおり、特別な日ですものね。

_ grendel's mum ― 2011/09/21 20:09

danteさま、

わあ、ありがとうございます。そう言っていただけると秋分の日説、もう少し追求しようという気になりました。トールキンが専門としていた中世英語文学で、秋分の日がどう扱われていたかとか・・・。
『聖ブレンダンの航海』では、「この世の楽園」を目指して航海に出るのは夏至の日なんですけれどね。秋分が物語のキーポイントになっているのって、あったかなあ・・・。

_ jade ― 2011/09/23 11:09

21日は、The Hobbit の初版第1版がAllen & Unwin から出て74年だったそうです。これはたったの1,500冊しか刷られていません。12月までには売り切れたとのこと。

ところで、TORn が米国時間24日(土)朝9時から、 LotR 拡大版3作を見るマラソンを行います。日本だと24日夜10時からかな。(合ってる?)
これは、各自がそれぞれに LotR を見て、チャットで語り合うというもののようです。(しかし、世界中から参加するチャットを読んでいたら、映画なんか見ている暇があるんだろうか??)
各リージョンによってDVDの速度が違ったりするので、モジュレーターが時々今どこを見ているのかを通知して調整するそうです。劇場版しか持っていない人も、拡大版にだけ入っている部分で止めて待っていることで参加できます。これもモジュレーターが通知してくれるそうです。

当然ながら、3作全部を見ますから終わるまで13時間かそこらはかかります。元気な方はどうぞ〜! 
あ、でもこの連休に1日1作 BDで見るというのは良いアイディアかも。

http://www.theonering.net/torwp/2011/09/21/48345-torn%E2%80%99s-2011-lotr-ee-trilogy-marathon/

それから、 PEZ の LotR セットができました。ちょっと気色悪い気もしますが・・・。限定発売で、番号がついています。
ビルボ、フロド、サム、ガンダルフ、アラゴルン、レゴラス、ギムリ、ゴラムが入っています。また、サウロンの目が入ったものも作られるそうです。1セットおよそ$24.99だそうです。

http://www.theonering.net/torwp/2011/09/22/48379-pez-the-lord-of-the-rings-gift-set-is-here/

む〜ん。わたしこういうもの食べる習慣がないし、ゴクリから出てくるものを食べるなんて気色悪〜!

_ grendel's mum ― 2011/09/23 23:14

チャットしながら映画見るって楽しそうだけど〜。
group watchでもgroup readingでも、参加したいと思ってはいても時間が合わなかったり、忙しくて余裕がなかったり、結局だめですねえ。

ところで、PEZのLotRのフィギュアのキャンディのリンクですが、jadeさまがはってくださったの、なぜかだめですね。これなら見られるか?
http://www.theonering.net/torwp/category/merchandise/

たしかに、これ、気色悪すぎ〜。カニバリズムよ、これじゃあ〜!

_ jade ― 2011/09/24 00:24

袋小路屋敷のケーキだそうです。主婦の手作り。

http://instagr.am/p/N4yD9

_ Lucille ― 2011/09/24 11:40

それは絶対に深~い意味がありそうね!東洋占星術でも秋分の日は一年の切りかえの日よね。聖ブレンダン…は夏至なのね。興味深いわ~(365日の誕生日の本がどこかにあるの。何か参考になるかしら?9月22日見てみるわ)

_ grendel's mum ― 2011/09/24 12:53

jadeさま、

袋小路のケーキ、キャラクターの頭のキャンディよりはいいけど、食べ物なら緑が抹茶色だといいのにね。
でも緑ならまだブルーよりいいです。昔アメリカですっごい鮮やかな水色の誕生日ケーキを食べろとすすめられて参ったことがある。

_ grendel's mum ― 2011/09/24 12:56

Lucilleさま

そうだわ、Lucilleさま、西洋・東洋を問わず、占星術にお詳しいのよね!どんな流派の情報でもいいので、是非とも9月22日生まれに関する情報、お寄せ下さいませ〜!!占星術の世界で、秋分の日がどんな意味のある日なのかも興味津々。

_ jade ― 2011/09/25 07:39

いつだか東京新聞の家庭の科学欄に、国ごとにおいしいと思う色が違うという話が載っていました。そういえば、'P.S. I Love You' に出て来たケーキもど青でしたね。わたしたちにはとても食欲をそそらない色ですが、彼らにはあれがおいしく見える色なのだそうです。

GMさま

Middle Earth の世界での暦も考えに入れた方がいいのでは? わたしたちの暦とは違うし。

ちなみに、Wiki に「9月22日」という項目がありました!

http://ja.wikipedia.org/wiki/9%E6%9C%8822%E6%97%A5

「9月22日(くがつにじゅうににち)はグレゴリオ暦で年始から265日目(閏年では266日目)にあたり、年末まであと100日ある。」
ビルボとフロドの誕生日も載っています。

_ grendel's mum ― 2011/09/25 12:04

jadeさま、

そんなウィキ記事があったんですね。(^o^)

Shire Calendarではどうか、ということはちゃんと考えてくれた人がいます。換算すると9月12日に当たるそうです:

http://tolkien.cro.net/hobbits/birthday.html

_ jade ― 2011/09/25 22:31

トールキン協会が、教授夫妻のお墓の写真をこちらに上げてくれました。

http://mypict.me/index.php?id=327037168

_ jade ― 2011/09/26 01:34

新しい Hi 5 がYTに上がっています。なかなかレベッカさんに劣らない仕事だと思います。彼女よりは聞きやすいし。(しかし、顔長い)
今日はアラゴルンのシャツですね。

http://www.youtube.com/watch?v=3ooJtr0u5ng

_ grendel's mum ― 2011/09/26 19:29

jadeさま、

わ、すみません、新しいHobbit in 5、早速記事にします。

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