リチャード・アーミティッジのIrish project:ブリジット・クリアリー2015/06/07 14:28

リチャード・アーミティッジの新しいプロジェクト、アイルランドの19世紀の事件に基づいたものということでしたが、それが判明したようですね!

「ブリジット・クリアリー焼死事件」と呼ばれている、1895年のアイルランド、ティペラリー州で起きた、妖精信仰がらみの事件についての映画化ということのようですね。

リチャードが演じるとたら、「妖精のチェンジリング」として焼死させられたブリジットの夫、マイケル・クリアリー役だと思われます。

これが逮捕された1985年当時のマイケル・クリアリー

服役後、1910年に釈放された時のマイケル・クリアリー


これ、と〜〜〜〜っても楽しみです!!\(^O^)/\(^O^)/\(^O^)/

このマイケル・クリアリーは、妻の親族と共に、彼女に憑依した妖精を追い出す儀式/治療を妻に対して行って、結果的に焼死させてしまいます。
アンジェラ・バーク(Angela Bourke)のThe Burning of Bridget Cleary: A True Story (London: Plimco, 1999)という研究書がありますけれど、とにかく、なぜ彼がそんな行為に走ったのか、そしてなぜ「故意の殺人」でなく、「非謀殺」という判決が出たのかをめぐる、家庭内での複雑な状況、その事件をアイルランド植民地支配の正当化の目的で、政治敵なプロパガンダとして利用しようとしたイギリスやプロテスタント勢力、などなど、日本でいう「狐憑き」祓いと似た「チェンジリング退治」の事件をめぐる物語、本当に興味深いのです。

言うまでもなく、マイケル・クリアリーという人物は、単純な迷信深い労働者というわけではなく、彼が置かれていた特殊な家庭内の立場(近所に住む妻の親族が四六時中家にいる中で、一人よそ者だった)や、子供のいなかった夫婦、特に当時としては珍しく自立した女性だったブリジットとの夫婦間のジェンダーのパワーバランスの問題など、さまざまな複雑な問題が絡んでいる事件です。

リチャードは、間違いなく、このマイケルという人物の悲劇を感動的に描き出してくれることでしょう!

妻の焼死体(=チェンジリング)を沼に埋めてから、妖精伝承にのっとって、妖精に略奪された「本物の妻」を取り戻すべく、近くの「妖精の丘」に三日三晩待機して、妻が妖精たちと白馬に乗って現れてくるのを待つ、というマイケルのパフォーマンスが、彼にとって、単なる迷信深い田舎者を演じていたという以上の意味があったことが見えてきて、そのあたり本当にどう映画で描き出してくるか楽しみです!

本を読むのはちょっと・・・、という方にお薦めなのが、同じくAngela Bourke女史の論文があります(論文なので文体は読みやすいとは言えませんが、すごく面白い!):
”Reading a Woman's Death: Colonial Text and Oral Tradition in Nineteenth-century Ireland", Feminist Studies, vol. 21, no. 3, 1995, pp. 553-586です。

英語は苦手・・・という方のためには、下楠昌哉著『妖精のアイルランド—「取り替え子」(チェンジリング)の文学史』(平凡社新書, 2005)もありますよ!

個人的にすごく興味のあるトピックなので (^o^) またこのブログでも詳しく色々と解説してみたいと思います。

そうそう、この事件の背景理解のためにもう一つ必読の詩作品がありました。
W.B. Yeats(イエイツ)の"The Host of the Air"という詩です。日本語では「風の妖精群」って訳されていたかな。
奇しくも同じブリジットという名前の新妻が、妖精王に連れ去られてしまうとてもロマンチックな詩作品です。これもお薦め!!