PJの映画『ホビット』擁護論2013/01/05 19:43




jadeさまがこの記事を和訳して下さいました(抄訳)。ありがとうございます!_(._.)_


別の場所のコメントに書いて下さったものですが、もったいないので別記事にしました。

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3日付の Huffington Post のコラムには、『ホビット』は一部では肯定的な評もあるけれども、大方の評はあまりよくない。しかし、現在『ホビット』を酷評している人たちは、いずれほぞを噛むことになるだろうとあります。 

テクストとしての『ホビット』の歴史と中つ国の全体的な構造を彼らは知らないが、PJは知っている。そして、長い目で見れば、酷評している者たちは自分たちの用心深さと、PJとその作品に対するあからさまな敵意をばかばかしいと感じることになるだろう、と述べています。 

1955年の『指輪物語』の完成までには、中つ国の数千年にわたる歴史の中で、「ひとつの指輪」の物語における『ホビット』の位置が非常に明確になって来ます。こうしたより大きな話の枠組みにPJは15年間焦点を当てて来たのです。現在51歳のPJは、人生のおよそ3分の1をこのプロジェクトに当てている訳です。PJのトールキンについての知識は、その辺のちゃちな映画評論家の知識をはるかに凌駕しており、彼の『ホビット』撮影の仕方がはっきりをそれを示しています。 

そして、ガンダルフがビルボを訪ねてくるまでに、中つ国ではすでにどのようなことが起きていたのかということを、示しています。 

では、『ホビット』が始まるまでにどのような歴史的な出来事があったのか概略をざっとおさらい。ネタバレを含みます。 

171年前。ドラゴンのスマウグが映画のドワーフの主人公たちの山の故郷を襲撃し、何千人も殺した後、彼らを追い出す。(この事実が強調していることは、中つ国の歴史はまずもって絶え間ない戦いの歴史だということです。)そして、これがドワーフ・オーク戦争の始まりとなる。この戦争の最中に、サウロンがトーリンの父が持っていた最後の「力の指輪」を手に入れる。 

91年前。ガンダルフは長い間抱いて来た疑惑を確信する。サウロンはドル・グルドルの支配者として、また「死人遣い」としても知られる者として中つ国に戻って来た。また、「力の指輪」を集めて、それらを全て支配する「ひとつの指輪」を探し出すというサウロンの計画も、ガンダルフは確信する。 

90年前。トールキンによれば、白のサルマンが邪悪になったのはこの時である。つまり、この時彼は「ひとつの指輪」を自分のために欲するようになり、中つ国の善とは正反対の決断をする。この年に行われた白の会議で、ガンダルフがドル・グルドルのサウロンの本拠地を討つことを促すと、サルマンは自分のために「ひとつの指輪」を欲しているがために、彼の意見を却下する。つまり、映画にサルマンが出て来たのは、批評家たちが言うような単なる懐旧のためではない。彼はすでに闇の側に行ってしまっていて、トーリンがエレボールへ行くことを自身の卑劣な理由から阻止しようとしているのである。主に、中つ国での新たな戦いに気を散らされ必然的にことが面倒になったりせずに、自分の「ひとつの指輪」探索を続けたいのだ。一方、ガンダルフは、サウロンが自分の目的のためにスマウグを得ようとしていると信じ、もしそういうことになったなら、モルドールを食い止めることはできなくなると恐れて、スマウグを殺したいのである。 

80年前。オークがローハンを一丸となって侵略し、王を殺す。 

56年前。サウロンの同盟者たちがゴンドールを苛烈に侵略し、北西の隣国ローハンは彼らを助けるために戦いに馳せ参じなくてはならなかった(LotR でも似たようなことが起きている)。 

8年前。アラゴルンが裂け谷に連れて来られ、エルフたちに育てられる。彼はサウロンの同盟者たちからの脅威にさらされているとみなされ、ゴンドールの正当な王としての身元は全員に秘される。 

2年前。サウロンの斥候たちが、アラゴルンの祖先イシドールが無くした地点の近くで「ひとつの指輪」を必死に探している。これが意味することは、(文脈的にも「歴史的」にも)『ホビット』の始まりと『指輪物語』の始まりとの違いは、サウロンが一生懸命に「ひとつの指輪」を探しているけれども、前者では《間違った場所》を探しているという事実だけである。 

こうして、『ホビット』が始まった時、サウロンは中つ国に戻って来ていて、「ひとつの指輪」を探しているということが、(少なくとも映画の主人公の一人には)知られている。地上で最強の魔法使いが、悪に転じたのだ。最強のドワーフ、トーリンは(ボロミアを除くLotR の主な主人公たちとは違って)、戦死するまで数ヶ月を残すのみで、映画評論家がよく間違って比較するあまり複雑ではないアラゴルンのような人物であるよりも、ボロミアのような悲劇的な人物となる。 

『ホビット』の出来事からほんの10年後—須臾の間に等しい(参考のために、アラゴルンが『指輪物語』の出来事の後でホビット庄の友人たちを訪ねたのは15年後)—サウロンはモルドールで自身をおおっぴらにする。 

ということで、こういう背景を知らないで評を書いている The Atlantic やCNN、The Washington Post やその他の的外れの評なんかに耳を傾けちゃいけません。 

そして、ジェーン・オースティンやトルストイを翻案した映画の評をするのに、原作をろくに知らないことを示して許されるわけがない、と述べています。『ホビット』評は、批評家と読者がトールキンの物語や、作者の死までに実際に意図されていたこと、そして90年代半ばにジャクソンがこれを映画として大ヒットする可能性があると発見したことを知らないことにつけ込んでいる。 

時が経てば、『ホビット』三部作にこれまでよりももっと好意的な口調になるだろう。この記事が書かれた時点では、評価が辛いことで有名なRotten Tomatoesで42%という低評価(『スター・ウォーズエピソード1:ファントム・メナス』の38%をかろうじて上回っている)を下したことをを恥じ入ることだろう。 
_______ 
jade注:本日の時点でのRotten Tomatoesの評価は65%にアップしています。 

http://www.rottentomatoes.com/m/the_hobbit_an_unexpected_journey/ 

コメント

_ shiro ― 2013/01/05 21:02

GM様 RAさんファンの皆様 
本年もよろしくお願いいたします。
jade様の訳文ありがとうございます。歴史がとても分かりやすいですし、映画Hobbitの中でサルマンに感じた違和感も我が意を得たり!!という感じでした(生意気かな)。
やっと年末に川崎の109のIMAXシアターへ参りました。 乗り物酔いしやすい私には思ったほど3D度が激しくなかったので楽でした。 生声を楽しむにはやはり吹き替えで観ないといけませんね。 ただ、相変わらず席運がないのか、お隣さんの出入りが激しくて閉口でした。 物語が始まってから眼前にふさがるように立つのは勘弁してほしいです。 こうなったらもう一度くらいは観に行きたいと思います。 今冬はRAさんのトーリンが世界を席巻ですね。

_ jade ― 2013/01/05 23:21

上のは全訳じゃなくて、抄訳です。あちこち所々はしょってあります。

_ grendel's mum ― 2013/01/06 00:07

shiroさま、

明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。

IMAXで見ていただけて、そしてRAの声を聞いていただけてうれしいです!HFR 3Dは、従来の3Dより目に楽なんですよね。
それにしても、そんなに席を立つなら、通路側の席をとるべきですね。人の視界を遮るなんてマナー違反もいいところ!
是非もう一度ご覧ください!辻堂の109シネマズのIMAXもお薦めですよ。(箱が川崎より小さい分、画面が巨大に見えるので、席は前の方は避けた方がいいです)。

_ grendel's mum ― 2013/01/06 00:07

jadeさま、

私の書き方だと、全訳って思われてしまうかしら?「抄訳」って断りを入れておきますね。

_ shiro ― 2013/01/06 00:59

GM様

すみません、何だか意味不明な書き方をしてしまっていました。
IMAXで観たのは吹き替えじゃなくて字幕です。
ごめんなさい。

_ jade ― 2013/01/06 17:32

こちらにも、映画に好意的な評が載っています。書き手は相当のトールキン・ファンです。

http://www.bettnet.com/blog/index.php/weblog/comments/review_the_hobbit_an_unexpected_journey/

わたしも、この人と同じで、トロールの場面でビルボが声色を使って彼らを惑わしたのが無かったのが残念です。

元々連続した物語というよりはとてもエピソード的な原作を、映画ではトーリンの敵対者としてのアゾグの存在が物語をずっと繋ぐ糸となっている、と書いています。

_ grendel's mum ― 2013/01/06 21:47

shiroさま、

あ、こちらこそ失礼。IMAXでリチャードを堪能していただけたんですね!よかった。(^o^)

jadeさま、

トロルの声音を真似て夜明けまで時間かせぎをしたのは、ビルボじゃなくてガンダルフですわよん。

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